2024年度の研究・事業への助成応募件数は、14件でした。
2025年4月17日 秋田キャッスルホテルにて助成金贈呈式を行いました。
2025年度の募集は10月1 日〜翌年1月31日を予定しております。

テーマ【県民の健康増進に繋がる惣菜の開発】
〔助成金 100万円〕
須磨 亜沙子 様
聖霊女子短期大学生活文化科健康栄養学専攻 講師
・具体的な取組み及び期待される効果
核家族化の進行、共働き世帯の増加を背景に、より簡便に食事が摂れる中食の消費が伸びている。また、新型コロナ渦を経て国民の生活様式が変化し、外食から中食へシフトが進み、惣菜市場が拡大している。惣菜市場は、今後もより大きく発展するトレンドになると考えられる。一方で、惣菜や弁当は、野菜摂取不足、脂質や塩分の摂取過多に繋がり、中食の栄養バランスに対する懸念も少なくない。今後も惣菜市場は拡大するとみられるが、簡便さだけではなく栄養面についても消費者のニーズを取り入れたメニューの拡充が必要と思われる。特に、県民の食塩摂取量過多、野菜・果物類の摂取不足、脂質摂取エネルギー比率の増加が指摘されており、食生活の改善が課題となっている背景から、健康づくりを目的とする中食の活用展開が不可欠である。
本研究は、近年の食生活に定着しつつある中食に着目し、低塩分・低脂質、野菜摂取強化など栄養バランスに優れた惣菜の開発・普及を通じて県民の健康推進を目指すものである。惣菜には、枝豆、椎茸などの本県産食材を積極的に取り入れる予定であり、地域独自の惣菜となる可能性が高い。また、消費者が抱く惣菜の負のイメージの払拭にもなり、惣菜市場の進化・拡大に繋がることが期待される。。
テーマ【東北地域の伝統的農業を支える縁の下の力持ち、微生物の単離・同定・解析と活用】
〔助成金 100万円〕
白石 晃將 様
国立大学法人 京都大学大学院農学研究科 助教
・具体的な取組み及び期待される効果
本研究は、東北地域の農業を支える微生物に着目し、その多様性と機能を明らかにすることで、持続可能な農業への応用を目指す。農作物(穀物、野菜、果実など)の地上部(植物葉圏)に存在する微生物叢を解析し、宿主特異的な共生微生物を特定する。特に真核微生物に注目し、農業用微生物資材として有望な株を単離・評価する。
本研究により、東北地域の主要農作物に棲息する微生物叢データと葉圏真核微生物のリストを取得し、科学的知見を深化させる。また、単離微生物を用いた発芽率やバイオマス量の評価試験により、有望な農業用微生物資材の候補を特定し、圃場試験へと展開するための基盤を構築する。
さらに、研究の過程でセミナーを開催することにより地元研究者や農家、自治体などとの連携を強化し、農業と科学の橋渡しを行うことで、次世代の農業人材の育成にも貢献する。
テーマ【秋田の未来を創る!デジタル技術でつなぐ、人と地域】
~最新技術を活用した秋田の地域教材開発と小学生・中学生の地域理解促進の研究~
〔助成金 50万円〕
加納 隆徳 様
国立大学法人 秋田大学教育文化学部 講師
・具体的な取組み及び期待される効果
本研究は、社会科におけるICT技術の活用を通じ、児童・生徒に「地域を見る眼」を育む教育方法を検討する。従来の地域学習では、地理情報を単なる知識として習得するに留まり、実際の生活圏や地域課題との乖離が問題視されている。特に秋田県では、学校統廃合に伴い広域化した校区や、身近な地域事象の希薄化が顕著であり、地域固有の特性を把握するための新たな学習方法が求められている。そこで本研究では、地域の景観や自然・社会環境、さらには生活に密着した事象を、地図などの地理情報を駆使しながら学ぶ手法を探り、地域の地形情報を教材化したものを授業実践するものである。
具体的な実践方法としては、①ドローンを用いた地域学習、②360度カメラを使用した疑似まち歩き、③3Dプリンターで作成する立体地図の三点が挙げられる。ドローンでは学校のグラウンド上空から地域全体を高精細な映像で捉え、児童・生徒が自分の住む地域の方向や土地利用、産業構造などをリアルタイムで観察できるようにする。360度カメラは、実際に現地に行くことが困難な広域の地域も体験できる教材として活用し、地域の多様な風景を臨場感ある映像で伝える。さらに、3Dプリンターを用いて作成した立体地図により、自然景観と人口や生産、居住形式といった文化景観との関連性を多層的に理解することを目指す。
これらの手法により、ICT技術を効果的に取り入れた新たな地域理解の教育モデルの構築が期待される。
テーマ【ツキノワグマのDNA分析による個体群調査手法を用いた資源活用の検討】
〔助成金 50万円〕
遠藤 金吾 様
秋田県立秋田高等学校 教諭 (博士号教員)
・具体的な取組み及び期待される効果
本研究の1つ目の目的は、ニホンツキノワグマの体毛や肉片からのDNA抽出およびPCR法による分析を行い、類縁関係を調査し、秋田市近郊の地域個体群の分布や動態を明らかにすることである。これにより、ニホンツキノワグマの適切な保護管理体制の整備に貢献することを目指す。
本研究の2つ目の目的は、ニホンツキノワグマの皮膚や爪を加工し、工芸品を開発することである。これによって、秋田県の自然環境や工芸品を対外的にアピールする材料とすることができる。
本研究の3つ目の目的は、本研究を通して、研究に携わる生徒たちの論理的思考力やディスカッション能力、プレゼンテーション能力、科学に対する興味、関心を高め、生命科学、生態学、環境科学に対して夢と希望を持って未来に向かって邁進する人材を育成することである。本研究を通してこれらの資質・能力が伸長した生徒が、将来、生命科学、医学、食品化学分野の研究者となり、本県に新たな産業を生み出したり、地域産業を活性化させるような研究成果を出すことで、人口減少の課題解決へと繋がることを期待したい。