2025年度の研究・事業への助成応募件数は、22件でした。
2026年4月24日 秋田キャッスルホテルにて助成金贈呈式を行いました。
2026年度の募集は10月1日〜翌年1月31日を予定しております。

テーマ【葉に宿るミクロの力”が拓く東北地域の農業の未来
-植物葉圏微生物の活用による作物増収技術の開発-】
〔助成金 100万円〕
白石 晃將 様
国立大学法人 京都大学大学院農学研究科 助教
・具体的な取組み及び期待される効果
本研究は、植物地上部(葉圏)に棲息する微生物に着目し、農業生産の向上に資する作物増収技術の開発を目指す。
具体的には、複数の地域において圃場試験を実施し、葉圏微生物による作物増収効果を評価する。また、その作用機序を分子レベルで解析する。さらに、研究セミナーを開催し、農業現場と科学技術を結びつけるとともに、農業人材の育成にも貢献する。
これらを通じて、低環境負荷型農業資材の開発に資する科学的基盤を構築するとともに、農業に関する知の循環と人材育成の促進を通じて、地域社会の発展にも資することが期待される。
テーマ【「匠の技」を次世代へ : 品質安定化とブランド戦略構築に向けたいぶりがっこの菌叢解析】
〔助成金 50万円〕
横田 早希 様
秋田県総合食品研究センター
醸造試験場 食品生物機能チーム 主任研究員
・具体的な取組み及び期待される効果
秋田県の伝統食品「いぶりがっこ」は近年人気が高まり需要は年々増加しているが、高齢化等の問題から個人の生産者は今後減少していくことが予測され、その製造の工業化と生産規模拡大が望まれる。特に、大手スーパーや外食チェーンを介したさらなる全国展開には、食中毒リスクの徹底的な排除や味等のロット差の解消が必要であるが、現状いぶりがっこの製法は自然発酵、すなわち原材料や環境由来の微生物による発酵であり、これまでいぶりがっこの発酵に有用な菌種は明らかになっていない。
そこで本研究ではいぶりがっこの菌叢解析と呈味成分の解析を行い、両者を比較することで菌叢と呈味の関係を明らかにすることを目的とする。これにより、いぶりがっこの発酵に有用な菌種を探索し、いぶりがっこの品質安定化や新たないぶりがっこの開発につなげていきたい。また本手法を確立することで、各社のいぶりがっこの差別化や販売促進にも応用が期待できる。
テーマ【ω3脂肪酸が肝臓における抗線維化作用を有することに着目した
ワカメ、ギバサを代表とする秋田の海藻食文化の再評価】
〔助成金 50万円〕
山形 健基 様
国立大学法人 秋田大学医学部附属病院 医員
・具体的な取組み及び期待される効果
秋田県で広く食卓に供されるギバサやワカメは、他の海藻類と比して豊富なω3脂肪酸を含有する。ω3脂肪酸には肝線維化の改善作用など、多方面から有用な生理活性が報告されている。申請者の所属する教室においてもω3脂肪酸を豊富に含む魚油由来脂肪乳剤が肝線維化のキープレイヤーである肝星細胞に対して抗線維化作用を有することを報告している。
本研究の第一の目的は、海藻から抽出したω3脂肪酸の肝星細胞に対する抗線維化作用を検証することである。特にギバサのように日本海沿岸の限られた地域でのみ親しまれている食材に関して、科学的エビデンスを伴った新たな付加価値を与えることで県外、海外への発信の足がかりとなることが期待される。
本研究の第二の目的は、ω3脂肪酸の肝線維化における働きを解明することである。ω3脂肪酸による肝線維化抑制作用について、その機序などまだ不明な点が多い。
申請者の所属する教室での過去の研究で、ω3脂肪酸を添加した培養肝星細胞が抗線維化作用と併せて特異な表現型を示すことを明らかにしており、これを切り口に、まだ明らかになっていない抗線維化メカニズムを解明するというチャレンジングな側面も有している。
テーマ【市場POSデータに基づく秋田の「隠れ塩分」消費構造と地域医療費の経済分析
-購買ビックデータを用いた減塩介入による将来医療費削減効果の試算-】
〔助成金 50万円〕
吉田 浩 様
国立大学法人 東北大学経済学研究科
高齢経済社会研究センター長 教授
・具体的な取組み及び期待される効果
本研究は、市場POSデータを用いて地域住民の日常的な「購買行動」と地域の医療費データを統計的に接続し、相関関係と因果関係を解明する。第1に、購買データにより地域住民の「隠れ塩分」消費実態を可視化する。第2に、購買行動と地域医療費との相関分析を行う。第3に、減塩の経済効果を定量的に試算する。これにより、地域の流通業を単なる物販の場から「健康寿命を延伸する社会インフラ」へと進化させ、「流通業の力で医療費を抑制し、地域経済を持続可能にする」という新たな社会モデルを目指す。
本研究の特色は、地域住民の健康課題に対し、経済学の視点から購買行動分析を通じて検討する点にあり、以下の2点において独創性をがある。第1に、「隠れ塩分」の経済学的可視化である。自己申告調査では把握が困難な加工食品由来の塩分摂取量を、市場POSデータという客観的なデータに基づいて推計する手法は、従来の栄養疫学研究を補完する試みである。第2に、市場POSデータと医療費・介護費に関するオープンデータを接続する。購買行動の変化が、一定のタイムラグを経て地域の医療・介護費に与える財政的影響を定量的に分析する。この点は、医療経済学分野において新たな分析視角を提示する研究テーマである。
テーマ【秋田の伝統食材ギバサの漁獲量安定を目指す、
潜水士の負担を軽減する省力的な岩盤清掃技術の開発】
〔助成金 50万円〕
甲本 亮太 様
秋田県水産振興センター
増殖部 部長
・具体的な取組み及び期待される効果
ギバサ(標準和名アカモク)は本県の伝統的な海藻食文化を支える重要資源であるが、近年は全県的に漁場が減っているため、漁獲量も減少傾向にある。これまでの研究で、岩肌の付着物を除去する岩盤清掃を行った後にギバサの種を散布することで、清掃の1年後にギバサ漁場を回復する技術を開発した。現在は作業の効率化を図るため、水中油圧グラインダーを用いているが、水中でグラインダーと油圧ホースを同時に取り扱う作業は潜水士の肉体的負担が大きく、清掃面積拡大の障壁となっている 。
本研究では、グラインダーの重量を船体から支え、位置調整を補助する「支持棒」および「保持具」を開発する 。これにより潜水士を重労働から解放し、海底での精密な作業と持続時間の延長を可能にすることで、1日あたりの造成面積を大幅に拡大させる実証試験を行う 。 本研究は、(1)産業振興、(2)漁業人材の育成、(3)伝統的な食文化の継承に合致するものである 。
